2023年03月11日

3月11日

今年も3月11日になりました。震災・津波で亡くなったみなさんのご冥福をお祈りします。

行きがかり上、どうしても翌日からの東電原発事故の記憶が強いんだけど、まずこれは多くの方が震災・津波で亡くなった大災害だということは忘れないようにしたいところです。宮城県沖と阪神淡路と東日本は僕にとって忘れることができない大災害です。中でも東日本大震災は桁違いに規模が大きかった。震災の当日、僕は立川の統計数理研にいて、テレビで津波の映像を見ました。あれは決して忘れないと思います。

その上で、いくつかの記憶。当時わりと人気のブログをやったりしていた関係からか、東電原発事故関連(というより、放射能問題関連)でいろいろ発言することが増え、なぜかいくつかの雑誌にも取り上げられたりしました(どうして週刊プレイボーイが僕になんかインタビューしたのか、いまだにわかりません。プレイボーイはその後わりと残念な道を辿ります)。しかし、12年経って振り返ると、ほんとうに人々の役に立てたのは、みんなでやったガイガーカウンターミーティングと小峰さん・おかざきさんと作った『いちから聞きたい放射線のほんとう』くらいだったのではないか。それ以外にもいろいろ頑張ろうとしたとは思うけど、いかんせん遠くに住んでるし、たいがいは空回りだった気がします。

東電原発事故はいろんな意味で終わってないのですが、幸いにも放射能汚染は少なく、健康影響が出ないのは明らかだし、もちろんこれから生まれてくる子供達にはなんの影響もありません。福島に暮らすことは、日本の他の地域で暮らすこととなんら変わりない。でも、残念ながらそれが広く理解されてるとは言い難いですね。帰還困難区域がまだ残っているし、自主避難者もいるし、甲状腺検査も続けられているし、まだまだ終わっていない。空回りでも、何かを言い続けるのはだいじなのかなという気はします。僕にもっと力があればよかったんだけど、力はないからね。

放射能問題で知り合った人もいれば離れていった人もいます。でも、総じて言うと、直接の知人の多くはそういう意味ではまともだったな。それはよかったと思っています。
posted by きくちまこと at 20:54| Comment(0) | 日記

2023年01月28日

ヴァリス

ずいぶんと久しぶりにP.K.ディック『ヴァリス』を読みました。これまでは大瀧訳だったけど、今回は山形訳。山形訳は好き嫌いが分かれそうだね。

『ヴァリス』はディックの代表作にして、最高に狂った小説で、こんなもんが出版されたのはこの時点でディックがベストセラー作家になっていたからでしょう。その前の売れない作家時代ならとても出版されなかったと思う。

ディック自身の神秘体験をもとにした半分実話で半分は妄想でできている作品ですが、この神秘思想のところを真に受けると頭がおかしくなるので、狂った作家の妄想作品と受け取るのが正しいでしょう。

これは『高い城の男』の続編として構想された小説で、それが二転三転してこうなったのですよね。途中段階の作品は『アルベマス』として出版されてて、まあ『高い城の男』の続編と言われればそうかなという感じ。この世界は「帝国」が支配するまやかしの世界だというのが『高い城』と共通のビジョンで、『ヴァリス』ではいずれ救世主が現れて帝国は滅ぼされるという希望(というか願望)が語られる。

しかし、とりあえず「帝国」を支配してるのがニクソンで、ウォーターゲート事件によるニクソン辞任が神性の顕れだというのは日本人には理解しがたいし、そもそもしょぼい話だね。まあ、ディックにとってはニクソンが重要だったのでしょう。

『ヴァリス』はディックの代表作だけど、SF読み始めの人には勧められないし、それどころかたいていのSFファンにも勧めがたい作品です。ディック・マニアだけが読めばいいと思う。ただ、『ヴァリス』三部作の最後を飾る『ティモシー・アーチャーの転生』はディック作品の中で最高に美しいので、これを読むためだけに頑張って『ヴァリス』と『聖なる侵入』を読むのもありかもですね。

posted by きくちまこと at 22:51| Comment(0) | SF

2023年01月03日

創元SF短編賞

今年も創元SF短編賞に応募しました。と言っても、結局純然たる新作は書けずじまいで、「第二回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」に出して一次選考を通った作品を改稿して出しました。新作じゃないのは忸怩たるものがありますが、しかたありませぬ。
さなコンが1万字だったところ、今回の改稿版は2万字ちょっとなので、倍以上になりました。原稿用紙換算で60枚。いい感じの長さだと思います。オリジナルは相当無理して1万字に収めてたので、これでようやくほんとうに書きたかった作品になったかなという感じです。

ただひたすらハードSFで、科学の議論が延々と続いて小説の構成を壊しかねない(壊してる?)くらいになってしまい、そこをどう評価されるか。あと、やっぱりとにかく地味なんですよ。創元はわりとエンタメ重視的なところがあるから、地味なのは不利だろうなあとは思いつつ、気に入ってる作品なので。

去年は2/28に一次の結果が出てたから、今年も同じ感じになるのでしょう。去年より先に進みたいものですが、どうなりますかね。

そこそこのできの50枚の作品を7本書けば、コンテストを通さなくても出版できるのだとは思いますけれども、とりあえずコンテストに出すのはモチベーションになるので。
posted by きくちまこと at 16:18| Comment(0) | SF