ちょっと時間が経ってしまいましたが、第10回星新一賞というのに応募していました。最終選考に残ったので、せっかくだからグランプリが欲しいなあと欲を出してはいたものの、そこまでうまくいくはずもなく、優秀賞(図書カード賞)というのをいただくことになりました。優秀賞の中ではいちばん下とはいえ、2000作以上の応募の中からグランプリと優秀賞合わせて5作の中にはいったのだから、上出来と言うべきでしょう。
星新一賞は実質的には短編SFの賞なのですが、SFと謳わずに「理系文学」と謳っています。僕はそこをかなり真剣に考えて、自分なりの理系文学を書きました。正直、そういう観点で審査されたかはわかりません。選評を読むと、普通にSFの審査をしたようには思いますが、そこはきちんと趣旨に合わせたということで。
今回の応募作では「林檎園の科学」をテーマにしました。ヒントになってるのはKaguya planetが「果樹園が出てくるSF」を募集したことなんですが、Kaguyaのは短すぎるので出していません。あくまでもヒントということで。
僕の父方の曽祖父は「青森りんごの開祖」と呼ばれる人物です。亡くなった父も長く弘前大学でりんご栽培の研究に携わりました。だから、林檎園の科学をテーマに書くのは、僕にとっては自然というか、一度は書いておきたいテーマでした。参考文献は父の著書です。とはいえ、もちろんそれだけではSFにならないので、林檎園で何が起きればSFになるかを考えて書いたのが今回の応募作品です。
そういう経緯なので、主眼は「林檎園小説」で、結果としてSFの部分はいささか甘くなったかなとは思います。でも、「理系文学」という意味ではかなり満足のいくものが書けた気がします。あとは、上に書いた事情でかなりパーソナルな作品になりました。そこらへんの評価は読者におまかせします。
星新一賞の表彰式は新型コロナ禍で途絶えていて、ひさしぶりの「オフライン」開催だったようです。残念ながらパーティのようなものはなく、出席者も少数でしたが。コロナ前はパーティがあって、SF関係者も多く出席していたようですね。ちょっと残念。
審査員だった池澤春菜さんとお話しさせていただき、猛プッシュされて某団体に入ることになったみたいです。作家じゃないのに。小松左京事務所の乙部さんや星ライブラリーの星マリナさんともお話させていただきました。
さて、これからどうしますかね。グランプリを取りたいからまた星新一賞に出すのか、それとももうこれでいいのか。星新一賞は1万字制限なので、ちょっと短い。今回の応募作品にはちょうどよかったとは思っていますが。気持ち的には創元SF短編賞の最終に残りたいなあというのが強いけど、星賞向きのアイデアが浮かんだら出そうかな。星賞は何を求められてるのか、ちょっとはっきりしないところがあります。僕の今回の応募作品はエンタメ性皆無の半ば普通小説なので、創元なら通らないな。でも、グランプリ作品はエンタメ度高い。難しいね。
受賞作品集はhontoで電子書籍として無料配布されています。ぜひお読みください。