zabadak 30th のDVDをほんとに久しぶりに観ました。届いてすぐに観て、それ以来そのままにしてあったものです。
一日目を先週だか先々週だかに観て、今日は二日目を。これは吉良さんの最後の映像作品です。
一日目は幕開けから「夏秋冬春」アルバム全曲演奏という思い切ったプログラムで、いきなりアルバム1枚分のインストですよ。この日はリクエストに基づいて曲を決めたようで、長尺のインストから珍しい曲まで。今観ると、吉良さんに疲れは感じるものの、アンコールの「遠い音楽」までとてもいい演奏が続く名盤です。プログレ、特にマイク・オールドフィールド系が好きなかたにはお勧めしたいところ。
二日目は「遠い音楽」の別アレンジに始まり、斎藤ネコ・カルテットによる「桜」。これがよい。元々名曲ですが、ストリング・カルテットでの演奏はとてもよいです。これはきちんとスコアを出すべきじゃないかな。一部はネコカルをバックに数曲。それから日比谷カタンさんによるzabadakメドレーを挟んで、問題の第三部。事情を知らないかたのために書くと、この前に吉良さんが倒れて病院に運ばれたのですね。それでも、ゲストが次々と出てきてzabadakの歌を歌うという趣向の第三部は決行されました。清浦夏実さん本人による「旅の途中」や杉林恭雄さんが歌う"Harvest Rain"など見どころは多く、演奏はいつもの強力メンバーだし(アコギの不在感は如何ともしがたいとしても)、ある種の熱気とともに進むステージは感動します。吉良さん不在のため崩壊といえば崩壊だった原マスミさんの「小さい宇宙」ですら、原さんの天才ぶりに打たれます。最後は小峰さん渾身の「相馬二遍返し」。
この二日目後半は普通のレーベルならリリースしないと思うんですが、吉良さんも出したかったとのことで、出してくれてほんとうによかった。二日目第一部まではどなたにでもお勧めできます。名盤です。二日目第三部はファン向けですが、貴重な記録として。
僕はこのライブを観ていません。学会と重なっちゃって行けなかったんですが、学会なんか行ってる場合じゃなかった。今も痛恨です。二日目に何かが起きたことはツイッターで知りました。
この後、6月にチキンジョージでzabadakを観ましたが、小編成ながらものすごい演奏だったことを覚えています。あの日の音源が残っていればいいのに。吉良さんと会ったのはその日が最後だったはずです。
7月にzabadak 36thがあります。グッズ付きチケットのグッズは「夏秋冬春2022」ということで、主にこの日のメンバーによる「夏秋冬春」の再録音(吉良さんの録音は残しつつ)版です。
2022年06月18日
zabadak 30th
posted by きくちまこと at 20:49| Comment(0)
| 音楽
2022年06月12日
「第二回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」に参加しました
積年の約束を果たすべく創元SF短編賞に応募した経緯はTHATTA ONLINE 407号に書きました。二次選考で落選したので、作品もTHATTAに掲載してあります。ぜひお読みください。
僕はSFファン歴こそいたずらに長いものの、創作はほぼやってなくて、特にシリアスなSFは書いた記憶がありません。パロディみたいなのは書いてたけど。たぶん、シリアスな作品はこの創元SF短編賞が初めてじゃないかな。約束があったから書けたわけで、自分から書くという感じではなかったのですが。僕が最近マイクロノベルを書いてるのを知ってるかたもおられると思いますが、実はあれは創元の練習も兼ねて書き始めたのでした。電子書籍を二冊出しているので、最後にリンクを貼っておきます。
正直、創作は向いてないんじゃないかと思ってたんですよ。なんというかな、アイデアがまとまらないというか。たまに考えるんだけど、辻褄を合わせられないなあと思ってしまいます。でも、創元のはとにかく応募すると決めたので、強引に辻褄を合わせて書きました。その結果、僕は結構よく書けたと思っています。地味だけどね。
そんなわけで、もしかすると締め切りやお題があれば書けるんじゃないかと思っていたところへ、投稿サイトのpixivで「第二回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」というのが開かれるのを知りました。なんで知ったんだったかもう忘れたんですけど、とにかく知って、募集要項を読んでみたんですね。すると課題は作品の冒頭か結末に『そうして人類は永遠の眠りについた。』という文を置いて、1万字以内で書けというものでした。
書き出しか結末が決められているのはちょっと辛いかなあとは思ったんですが、これも練習だぜと数日考えたところ、なんかアイデアが沸いたんですよ。このお題は「永遠の眠り」という言葉をどう解釈するかが肝ですわね。単に人類滅亡の比喩と捉えたのでは面白くない。人工冬眠的なものもどうせ同案多数だろうと考えて、それも却下し、時々ぼんやり考えていたら、本格SF的な設定を思いついちゃったんですよ。2世紀くらい先に設定すればなんとなくいけそうな気がしたので、試しにと思って、ほぼノープランでとりあえず書き出してみました。主人公の恋人を量子技術者という設定にしておけば、困ったときの量子力学頼みでなんとかなるかなあとか、使うかもしれない伏線を思いつきで入れつつ、適当に書いていくうちにアイデアがまとまってきた。うん、ノープランでも書いてみるのは重要ですね。書きながら思いついたアイデアを入れていって、第一稿は二日くらいで書いたのかな。量子論に全部おまかせで、ハードSFっちゃあハードSFだけど、相当に無茶苦茶なアイデアです。タイトルはハードSFっぽくない感じを敢えて狙って『春分の月』としました。なぜかこのタイトルから僕はスターリングの『江戸の花』を思い起こすのですが、全然関係はありません。
思いつきで書いていったから、いろいろ辻褄の合わない点があるので、読み直しながら目につくおかしなところを修正して、投稿ですよ。このコンテストが面白いのは、投稿した作品はすぐに誰でも読めて、しかも締め切りまでは改稿し放題なんですね。だから、投稿してからいろんな人の意見を聞きながら改稿すればいいかと考えたわけです。で、実際にpixivのサイトに載せてから読み直してみると、辻褄の合わないところや設定がおかしいところは見つかるもので、それから締め切り前日くらいまで何度も手を入れました。
書けば書けるじゃんと自分を褒めたい。投稿した段階でチャレンジはほぼ終わりだということで、時々改稿しつつ他の応募作を読んで感心したりしていたのですが、ツイッターで投稿者の方々が結構盛り上がってるんですよ。それを読んだりツイッターのスペースで注目作紹介を聴いたりしているうちに僕の中でもお祭り気分が盛り上がってきまして、そのうちに、もうひとつくらい書こうかなあという気になりました。『春分の月』が課題文を冒頭に置いた作品だったので、結末に置いたのも書いてみたいと考えたのもあります。結末に置くほうが難しいですね。これを一人称の手記形式でやってみようと思って、これもぼんやりと考えていたら、また本格SFの設定を思いついてしまったのですね。そこでやはりほぼノープランで書き始め、途中で結末を思いついて寝床の中でとにかく結末を先に書いてしまい、これはいけるじゃんと思い、途中の科学的説明は書きながら考えていって、複雑系的なアイデアとかカオスとかを取り混ぜつつ、二日で書いて投稿しました。実働5時間くらい。
これも投稿後に辻褄の合わないところやアイデアが足りないところを補い、締め切り前日くらいに完成しました。当初はタイトルを『種と記憶』とzabadakの歌詞みたいなのにしたのですが、もうちょっと思わせぶりなほうがいいと考えて『あたしはまだここにいる』としました。複雑系生命理論をベースにした、とはいえ相当無茶なことをしたハードSFです。これもハードSFじゃないって言われるかも。
どちらもね、課題と締め切りがなければ書かなかった作品です。内容は課題文から思いついたものだし、どっちのアイデアも普段の僕なら「あまりにも無理やり過ぎる」と考えて捨ててたと思うんですね。でも、課題と締め切りが決まってるから、「これで行っちゃえ」と投稿しました。投稿してよかったと思います。無理にも投稿するのはだいじ。投稿後に改稿し続けて、もうひと文字もいじれないというところまで持ち込めたので、悔いはありませぬ。
ハードSFをふたつ書いたし、さすがにもういいかと思ったんですけど、青木孝明さんのライブを観に行く電車の中でもうひとつ思いついちゃったんですね。こちらはただの悪ふざけ作品で、行きの電車で書き始めて帰りの電車で投稿しました。それから、いろいろ改稿して、ありがちなメタフィクションのジョーク小説になったので、これはこれでいいかなと思っています。『そうして人類は永遠の眠りについたなの!!』という作品です。笑ってもらえればそれでいいです。
実は締め切りの翌日にさらにもうひとつ『そして次の朝が訪れた。』っていう超短編を投稿しましたけど、これは締め切り後のお遊びなので。
まあそんなわけで、お題と締め切りがあれば書けるじゃんという気になりました。ハードSF二作は自信作なんで、一次選考は通ると信じています。その後はね、審査員との相性だからわかんないですけど。SFを書くのは面白いなあと今更ながら実感したので(何年SFファンをやってるんだって話ですが)、これからちょくちょく書きたいものです。お題と締め切りがなくても書けるようになりたい。少なくとも創元のリベンジは必ず書きますよ。創元はね、やっぱり鮮烈なイメージのエンタメが通るんで、そういう方針でいかないと。あとはTHATTA ONLINEに定期的に書けるといいなあ。
コンテスト参加作はpixivのここにあります。ぜひ読んでくださいね。そして結果に乞うご期待。わかんないけど。
マイクロノベル集は以下のリンクから
マイクロノベルのBOOTHでの直販(EPUB形式)
飛行船の日(kindle)
町の記憶(kindle)
僕はSFファン歴こそいたずらに長いものの、創作はほぼやってなくて、特にシリアスなSFは書いた記憶がありません。パロディみたいなのは書いてたけど。たぶん、シリアスな作品はこの創元SF短編賞が初めてじゃないかな。約束があったから書けたわけで、自分から書くという感じではなかったのですが。僕が最近マイクロノベルを書いてるのを知ってるかたもおられると思いますが、実はあれは創元の練習も兼ねて書き始めたのでした。電子書籍を二冊出しているので、最後にリンクを貼っておきます。
正直、創作は向いてないんじゃないかと思ってたんですよ。なんというかな、アイデアがまとまらないというか。たまに考えるんだけど、辻褄を合わせられないなあと思ってしまいます。でも、創元のはとにかく応募すると決めたので、強引に辻褄を合わせて書きました。その結果、僕は結構よく書けたと思っています。地味だけどね。
そんなわけで、もしかすると締め切りやお題があれば書けるんじゃないかと思っていたところへ、投稿サイトのpixivで「第二回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」というのが開かれるのを知りました。なんで知ったんだったかもう忘れたんですけど、とにかく知って、募集要項を読んでみたんですね。すると課題は作品の冒頭か結末に『そうして人類は永遠の眠りについた。』という文を置いて、1万字以内で書けというものでした。
書き出しか結末が決められているのはちょっと辛いかなあとは思ったんですが、これも練習だぜと数日考えたところ、なんかアイデアが沸いたんですよ。このお題は「永遠の眠り」という言葉をどう解釈するかが肝ですわね。単に人類滅亡の比喩と捉えたのでは面白くない。人工冬眠的なものもどうせ同案多数だろうと考えて、それも却下し、時々ぼんやり考えていたら、本格SF的な設定を思いついちゃったんですよ。2世紀くらい先に設定すればなんとなくいけそうな気がしたので、試しにと思って、ほぼノープランでとりあえず書き出してみました。主人公の恋人を量子技術者という設定にしておけば、困ったときの量子力学頼みでなんとかなるかなあとか、使うかもしれない伏線を思いつきで入れつつ、適当に書いていくうちにアイデアがまとまってきた。うん、ノープランでも書いてみるのは重要ですね。書きながら思いついたアイデアを入れていって、第一稿は二日くらいで書いたのかな。量子論に全部おまかせで、ハードSFっちゃあハードSFだけど、相当に無茶苦茶なアイデアです。タイトルはハードSFっぽくない感じを敢えて狙って『春分の月』としました。なぜかこのタイトルから僕はスターリングの『江戸の花』を思い起こすのですが、全然関係はありません。
思いつきで書いていったから、いろいろ辻褄の合わない点があるので、読み直しながら目につくおかしなところを修正して、投稿ですよ。このコンテストが面白いのは、投稿した作品はすぐに誰でも読めて、しかも締め切りまでは改稿し放題なんですね。だから、投稿してからいろんな人の意見を聞きながら改稿すればいいかと考えたわけです。で、実際にpixivのサイトに載せてから読み直してみると、辻褄の合わないところや設定がおかしいところは見つかるもので、それから締め切り前日くらいまで何度も手を入れました。
書けば書けるじゃんと自分を褒めたい。投稿した段階でチャレンジはほぼ終わりだということで、時々改稿しつつ他の応募作を読んで感心したりしていたのですが、ツイッターで投稿者の方々が結構盛り上がってるんですよ。それを読んだりツイッターのスペースで注目作紹介を聴いたりしているうちに僕の中でもお祭り気分が盛り上がってきまして、そのうちに、もうひとつくらい書こうかなあという気になりました。『春分の月』が課題文を冒頭に置いた作品だったので、結末に置いたのも書いてみたいと考えたのもあります。結末に置くほうが難しいですね。これを一人称の手記形式でやってみようと思って、これもぼんやりと考えていたら、また本格SFの設定を思いついてしまったのですね。そこでやはりほぼノープランで書き始め、途中で結末を思いついて寝床の中でとにかく結末を先に書いてしまい、これはいけるじゃんと思い、途中の科学的説明は書きながら考えていって、複雑系的なアイデアとかカオスとかを取り混ぜつつ、二日で書いて投稿しました。実働5時間くらい。
これも投稿後に辻褄の合わないところやアイデアが足りないところを補い、締め切り前日くらいに完成しました。当初はタイトルを『種と記憶』とzabadakの歌詞みたいなのにしたのですが、もうちょっと思わせぶりなほうがいいと考えて『あたしはまだここにいる』としました。複雑系生命理論をベースにした、とはいえ相当無茶なことをしたハードSFです。これもハードSFじゃないって言われるかも。
どちらもね、課題と締め切りがなければ書かなかった作品です。内容は課題文から思いついたものだし、どっちのアイデアも普段の僕なら「あまりにも無理やり過ぎる」と考えて捨ててたと思うんですね。でも、課題と締め切りが決まってるから、「これで行っちゃえ」と投稿しました。投稿してよかったと思います。無理にも投稿するのはだいじ。投稿後に改稿し続けて、もうひと文字もいじれないというところまで持ち込めたので、悔いはありませぬ。
ハードSFをふたつ書いたし、さすがにもういいかと思ったんですけど、青木孝明さんのライブを観に行く電車の中でもうひとつ思いついちゃったんですね。こちらはただの悪ふざけ作品で、行きの電車で書き始めて帰りの電車で投稿しました。それから、いろいろ改稿して、ありがちなメタフィクションのジョーク小説になったので、これはこれでいいかなと思っています。『そうして人類は永遠の眠りについたなの!!』という作品です。笑ってもらえればそれでいいです。
実は締め切りの翌日にさらにもうひとつ『そして次の朝が訪れた。』っていう超短編を投稿しましたけど、これは締め切り後のお遊びなので。
まあそんなわけで、お題と締め切りがあれば書けるじゃんという気になりました。ハードSF二作は自信作なんで、一次選考は通ると信じています。その後はね、審査員との相性だからわかんないですけど。SFを書くのは面白いなあと今更ながら実感したので(何年SFファンをやってるんだって話ですが)、これからちょくちょく書きたいものです。お題と締め切りがなくても書けるようになりたい。少なくとも創元のリベンジは必ず書きますよ。創元はね、やっぱり鮮烈なイメージのエンタメが通るんで、そういう方針でいかないと。あとはTHATTA ONLINEに定期的に書けるといいなあ。
コンテスト参加作はpixivのここにあります。ぜひ読んでくださいね。そして結果に乞うご期待。わかんないけど。
マイクロノベル集は以下のリンクから
マイクロノベルのBOOTHでの直販(EPUB形式)
飛行船の日(kindle)
町の記憶(kindle)
posted by きくちまこと at 22:26| Comment(0)
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